○上越教育大学の研究活動における不正行為の防止及び対応に関する規程
(平成27年3月24日規程第12号)
改正
平成28年規程第5号(平成28年1月18日)
令和3年規程第25号(令和3年9月10日)
目次

第1章 総則(第1条-第8条)
第2章 不正行為の防止に係る体制(第9条-第12条)
第3章 告発等の受付(第13条-第16条)
第4章 通報者等の取扱い(第17条-第20条)
第5章 事案の調査(第21条-第31条)
第6章 不正行為等の認定(第32条-第34条)
第7章 不服申立て及び再調査(第35条・第36条)
第8章 調査結果の公表等(第37条・第38条)
第9章 措置及び処分(第39条-第45条)
第10章 雑則(第46条)
附則

第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は、上越教育大学(以下「本学」という。)の研究活動における不正行為を防止するため、本学において研究に携わる者の行動規範及び不正行為が生じた場合に厳正かつ適切に対応するための措置等について必要な事項を定めることを目的とする。
(研究活動の基本姿勢)
第2条 本学は、学問の自由の下に、研究者の自主的かつ創造的な研究活動を尊び、研究成果が人類の平和的発展や福祉・文化の向上に寄与する一方で、人類のさまざまな営みや世界観に多大な影響を与えることを常に認識し、研究の目的、方法、内容及び結果をたえず自省しなければならない。
2 本学は、研究活動を自ら点検し、これを社会に開示するとともに説明責任を果たさなければならない。
3 本学は、研究活動の不正行為について学術研究の信頼保持のために厳正な態度で臨まなければならない。
(研究者の行動基準)
第3条 本学において、研究に携わるすべての者は、研究者としての誇りと使命を自覚し、研究活動において不正行為を行わない、関与しないことはもとより、高い倫理観をもって研究活動の透明性と説明性を自律的に保証するよう努めなければならない。
2 指導的立場に立つ研究者は、研究活動の実施に際して、若手研究者及び学生に対し、常に研究活動の本質及びそれに基づく研究作法や研究者倫理に関する事項を指導することにより、研究に対する国民の信頼を堅持しその負託に応じなければならない。
(用語の定義)
第4条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 研究者 本学において研究に携わるすべての者をいい、常勤及び非常勤の別並びに本学からの給与支給の有無を問わない。この場合、学生及びポストドクター等も含むものとする。
(2) 研究活動 先人達が行った研究の諸業績を踏まえた上で、観察や実験等によって知り得た事実やデータを素材としつつ、自分自身の省察・発想・アイディア等に基づく新たな知見を創造し、知の体系を構築していく行為をいう。
(3) 捏造 存在しないデータ、研究結果等を作成することをいう。
(4) 改ざん 研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工することをいう。
(5) 盗用 他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用することをいう。
(6) 二重投稿 他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿すること。
(7) 不適切なオーサーシップ 論文著作者が適正に公表されないこと。
(8) 研究倫理教育 研究者の行動規範及び研究活動に関して守るべきルール等についての知識や技術を、研究者の理解を得るために第10条に規定する研究倫理教育責任者(以下「研究倫理教育責任者」という。)が実施する教育をいう。
(9) 資金配分機関 競争的資金等の公募型の研究資金又は運営費交付金等の基盤的経費等の配分をする機関をいう。
(対象となる研究活動における不正行為)
第5条 この規程において、研究活動における不正行為(以下「不正行為」という。)とは、次の各号に掲げる故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる行為をいう。
(1) 捏造
(2) 改ざん
(3) 盗用
(4) 二重投稿
(5) 不適切なオーサーシップ
(6) 不正行為が指摘された場合の証拠隠滅、調査の妨害(追試又は再現を行うために不可欠な実験記録等の資料の隠蔽、廃棄及び未整備を含む。)
(7) 上記各号以外の研究活動上の不適切な行為であって、科学者の行動規範及び社会通念に照らして研究者倫理からの逸脱の程度が甚だしいもの
(不正行為に該当しない行為)
第6条 この規程において次に掲げる行為は、不正行為に該当しない。
(1) 悪意のない誤り(科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであった場合を含む。)
(2) 意見の相違
(対象となる研究資金)
第7条 この規程において不正行為の対象となる研究資金(以下「資金」という。)は、資金配分機関より配分を受けた資金であり、研究者が当該不正行為に係る研究活動を行うに際して費消したすべての資金とする。
(研究者の責務)
第8条 研究者は、この規程を遵守するとともに、自らが研究活動における不正行為を行わないために必要な高度の研究者倫理を常に保持し、適正かつ公正な研究活動を行わなければならない。
2 研究者は、故意若しくは重大な過失による実験・観察ノート等の記録媒体及び実験試料・試薬等(以下「研究データ」という。)の破棄や不適切な管理による紛失を防ぐため、研究データを一定期間保存し、必要な場合にこれを開示しなければならない。
3 前項に規定する研究データの保存及び開示に関する具体的な内容やその期間、その方法については、データの性質や研究分野の特性等を踏まえ、別に定めるものとする。
4 研究者は、この規程に定める事項及び研究倫理教育責任者の指示に従わなければならない。
5 研究者は、研究倫理教育を受講しなければならない。
6 研究者は、調査への協力要請があった場合は、これに協力しなければならない。
第2章 不正行為の防止に係る体制
(最高管理責任者)
第9条 本学に、不正行為の防止について最終責任を負う最高管理責任者を置き、学長をもって充てる。
2 最高管理責任者は、次条に規定する研究倫理教育責任者及び部局長が責任を持って不正行為に関する措置を適切に行うことができるよう、必要な措置を講じなければならない。
3 最高管理責任者は、不正行為防止対策の基本方針(以下「基本方針」という。)を策定し、研究者に周知徹底させるとともに、第12条に規定する研究活動の不正行為対策委員会が策定した本学における具体的な不正行為防止対策(以下「不正行為防止計画」という。)の進捗管理に努めなければならない。
(研究倫理教育責任者)
第10条 研究者に対する研究倫理教育を実施し、その受講状況を把握し、未受講の研究者等に対し必要な指導を行うことについて責任と権限を有する研究倫理教育責任者を置き、研究担当の副学長をもって充てる。
2 研究倫理教育の実施に関する必要な事項は、別に定める。
(最高管理責任者等の職名等の公表)
第11条 本学は、最高管理責任者及び研究倫理教育責任者(以下「各責任者」という。)に就任する者の職名等を、当該者が各責任者に就任したとき又は既に就任している者を変更したとき、公表するものとする。
(研究活動の不正行為対策委員会の設置)
第12条 不正行為の防止及び対応を審議するため上越教育大学研究活動の不正行為対策委員会(以下「対策委員会」という。)を設置する。
2 対策委員会の組織及び運営等に関し必要な事項は、別に定める。
第3章 告発等の受付
(告発・相談窓口の設置)
第13条 最高管理責任者は、不正行為に関する告発や情報提供(以下「通報等」という。)に対応するため、研究連携課に告発・相談窓口を置く。
2 告発・相談窓口の責任者は、対策委員会委員長とし、担当者は研究連携課長とする。
3 告発・相談窓口の名称、場所、連絡先、通報等の方法その他必要な事項を本学内外に周知する。
(通報等の体制等)
第14条 不正行為の疑いが存在すると思料する者は、何人も、通報等をすることができる。
2 通報等の方法は、書面、ファクシミリ、電子メール、電話、面談により告発・相談窓口に行うものとする。
3 通報等は、原則として、顕名により、不正行為を行ったとする研究者等の氏名又は名称、不正行為の態様その他事案の内容が明示され、かつ、不正とする合理的理由が示されていなければならない。
4 告発・相談窓口の担当者は、通報等を受け付けたときは、速やかに告発・相談窓口の責任者に報告し、当該責任者は最高管理責任者に報告する。
5 告発・相談窓口の担当者は、通報等を受け付けたときは、匿名のものを除き、通報等を受け付けた旨を当該通報者に通知する。この場合において、電話又は面談により通報等を受け付けたときは、当該通報者に口頭で受け付けた旨を連絡することにより通知を省略するものとする。
6 最高管理責任者は、第4項の報告を受けたときは、直ちに当該通報等の受理及び当該通報等された事案に係る予備調査(以下「予備調査」という。)の実施の要否を、対策委員会委員長及び関係する部局長並びにその他最高管理責任者が指名した者と協議の上、決定する。この場合において、この規程に定める不正行為以外の通報等の内容について本学以外に調査を行う研究機関等が想定される場合は、該当する研究機関等に当該通報等の内容について通知するものとする。
7 最高管理責任者は、当該通報等の内容が法律等に違反するおそれがある場合は、関係機関に連絡するものとする。
8 告発・相談窓口の担当者及び調査を担当する者は、自己と利害関係のある事案に関与してはならない。
(匿名通報等の取扱い)
第15条 前条に規定するもののほか、匿名による通報等があった場合は、通報等の内容に応じ、顕名による通報等に準じた取扱いをすることができる。
2 新聞等の報道機関、学会等の研究者コミュニティ又はインターネット等により不正行為の疑いが指摘された場合は、その内容に応じ、顕名による通報に準じて取り扱うものとする。
(通報等の相談)
第16条 不正行為の疑いが存在すると思料する者で、通報等の是非や手続きに疑問がある者は、告発・相談窓口に対して相談することができる。
2 相談内容が、不正行為が行われようとしている又は不正行為を求められているというようなときは、責任者に報告し、責任者は最高管理責任者に報告するものとする。
3 最高管理責任者は、その内容を確認・精査し、相当の理由があると認めたときは、関係する者に警告を行うものとする。
第4章 通報者等の取扱い
(秘密保持義務等)
第17条 告発・相談窓口の担当者は、通報等の内容及び通報者の秘密を守るため、通報等を受け付ける場合は、個室での面談又は電話若しくは電子メール等を受付窓口の担当者以外に見聞できないように、適切な方法を講じなければならない。
2 告発・相談窓口の担当者及びこの規程に定める業務に携わる者は、業務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。この場合において、当該職員でなくなった後又は当該業務に携わらなくなった後も、守秘義務を有するものとする。
3 最高管理責任者は、通報者、当該通報等の対象となった研究者(以下「被通報者」という。)、通報内容及び調査内容について、調査結果の公表まで、通報者及び被通報者の意に反して調査関係者以外に漏洩しないよう、秘密の保持を徹底しなければならない。
4 最高管理責任者は、当該通報に係る事案が漏洩した場合は、通報者及び被通報者の了解を得た上で、調査中に関わらず当該通報に係る事案について公表することができる。ただし、通報者又は被通報者の責に帰すべき事由により漏洩したときは、当該者の了解は要しないものとする。
5 対策委員会委員長は、通報者及び被通報者に通知をするときは、通報者、被通報者及び当該調査に協力した者等の人権、プライバシー等を侵害することのないように十分配慮しなければならない。
(通報者の保護)
第18条 部局長は、通報等をしたことを理由として、当該通報者の職場環境等が悪化することのないように、適切な措置を講じなければならない。
2 本学に所属するすべての者は、通報等をしたことを理由として、当該通報者に対して不利益な取扱いをしてはならない。
3 学長は、通報者に対して不利益な取扱いを行った者がいた場合は、国立大学法人上越教育大学職員就業規則(平成16年規則第10号)及び国立大学法人上越教育大学職員懲戒規程(平成16年規程第43号)その他関係諸規程(以下「就業規則等」という。)に従って、処分を課すことがある。
4 学長は、悪意による通報等であることが判明しない限り、単に通報等したことを理由に当該通報者に対して研究活動の全面的な禁止又は解雇、配置換、懲戒処分、降格、減給等を行ってはならない。
(被通報者の保護)
第19条 本学に所属するすべての者は、相当な理由なしに、単に通報等がなされたことのみをもって、当該被通報者に対して不利益な取扱いをしてはならない。
2 学長は、相当な理由なしに、被通報者に対して不利益な取扱いを行った者がいた場合は、就業規則等に従って、処分を課すことがある。
3 学長は、相当な理由なしに、単に通報等がなされたことのみをもって、被通報者の研究活動の全面的な禁止又は解雇、配置換、懲戒処分、降格、減給等を行ってはならない。
(悪意による通報等)
第20条 何人も、悪意(被通報者を陥れるため若しくは被通報者が行う研究を妨害するため等、専ら被通報者に何らかの損害を与えること又は被通報者が所属する組織等に不利益を与えることを目的とする意思をいう。以下同じ。)による通報等を行ってはならない。
2 学長は、前項の通報を防止するため、調査の結果、悪意による通報等であったことが判明した場合は、当該通報者の氏名の公表、懲戒処分、刑事告発その他必要な措置を講ずることができる。
第5章 事案の調査
(調査を行う機関)
第21条 本学の研究者を被通報者として、通報等があった場合、原則として、本学が通報等された事案に係る調査を行う。
2 対策委員会委員長が特に必要と認める場合に限り、他の研究機関等、当該資金配分機関又は学会等の研究者コミュニティに、調査を委託することができる。
(調査の協力義務)
第22条 調査の対象となる部局長は、調査の円滑な実施のために、当該調査を行う者に対して積極的に協力しなければならない。
2 部局は、調査を実施する上で必要な書類等の提出を求められたときは、これを拒むことができない。
(予備調査の実施の要否等)
第23条 対策委員会委員長は、予備調査の実施の要否について決定された場合は、当該通報者にその旨通知する。この場合において、予備調査を実施しないときは、その理由を付して通知するものとする。
2 最高管理責任者は、予備調査を実施することを決定した場合は、資金配分機関に対して予備調査を実施する旨通知する。この場合において、被通報者が本学以外の機関に所属しているときは、当該所属機関に対しても予備調査を実施する旨通知するものとする。
3 最高管理責任者は、不正行為が行われようとしている又は不正行為を求められているという通報等については、その内容を確認・精査し、相当の理由があると認めるときは、当該通報等に係る被通報者に対して不正行為を行わないよう警告を行うものとする。
(職権による調査)
第24条 最高管理責任者は、通報等の有無にかかわらず、相当の信頼性のある情報が提供され、不正行為があると疑われる場合は、予備調査の開始を対策委員会委員長に命ずることができる。
(予備調査の実施等)
第25条 対策委員会委員長は、予備調査の実施が決定されたとき又は前条の規定により情報が提供され、予備調査の開始を命ぜられたときは、予備調査を迅速かつ公正に行わなければならない。
2 予備調査のための調査委員会(以下「予備調査委員会」という。)に関し必要な事項は、対策委員会が別に定める。
3 予備調査委員会は、予備調査の対象となる部局に対して関係資料の提出、事実の証明その他予備調査を実施する上で必要な書類等の提出を求めるとともに、必要に応じて、次の各号に掲げる事項について関係者のヒアリングを行い、通報等の内容の合理性、調査可能性等の予備調査を実施する。
(1) 通報等された研究活動における不正行為が行われた可能性に関すること。
(2) 通報等の際示された科学的合理的理由の論理性に関すること。
(3) 通報等された研究の公表から通報等までの期間が、研究データの事後の検証を可能とするものについての各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間又は本学若しくは被通報者が所属する部局が定める保存期間を超えるか否かに関すること。
(4) その他予備調査委員会が必要と認める事項に関すること。
4 予備調査委員会は、通報等がなされる前に取り下げられた論文等に対する予備調査を行う場合は、取り下げに至った経緯・事情を含め、不正行為の問題として通報等された事案に係る本調査(以下「本調査」という。)を行うべきか否かを調査し、判断するものとする。
5 予備調査委員会は、通報等を受理した日又は予備調査を命ぜられた日から起算して概ね30日以内に予備調査の結果を対策委員会に報告する。
6 対策委員会は、前項に基づく予備調査委員会からの報告を精査し、その結果を最高管理責任者に報告する。
(本調査の実施等)
第26条 最高管理責任者は、前条第6項の調査結果の報告に基づき、本調査を実施するか否かを決定する。
2 最高管理責任者は、前項により本調査を実施することを決定した場合は、資金配分機関及び文部科学省に対して本調査を実施する旨通知する。この場合において、被通報者が本学以外の機関に所属しているときは、当該所属機関に対しても本調査を実施する旨通知するものとする。
3 本調査のための調査委員会(以下「本調査委員会」という。)に関し必要な事項は、対策委員会が別に定める。
4 対策委員会委員長は、第1項により本調査を実施することが決定された場合は、本調査委員会を設置して、原則として30日以内に本調査を開始させるとともに、通報者及び被通報者に対して本調査を行う旨及び本調査委員会委員の氏名・所属を通知し、本調査への協力を求める。
5 対策委員会委員長は、第1項により本調査を実施しないことが決定された場合は、その理由を付して当該通報者に通知するとともに、予備調査に係る資料等を保存し、当該事案に係る資金配分機関及び通報者の求めに応じ開示するものとする。
6 前2項の通知を受けた通報者及び被通報者は、当該通知を受けた日から起算して14日以内に対策委員会委員長に対して本調査委員会委員に関する異議申立てをすることができる。
7 対策委員会委員長は、前項の異議申立てがあった場合は、最高管理責任者、各理事及び各副学長と協議し、その内容が妥当であると判断したときは、当該異議申立てに係る本調査委員会委員を交代させるとともに、その旨を通報者及び被通報者に通知する。
8 本調査委員会は、指摘された当該研究に係る論文、実験・観察ノート及び生データ等の各種資料の精査並びに関係者のヒアリング及び再現実験の要請等により本調査を行うものとする。
9 本調査委員会は、本調査を実施する際において、本調査委員会が被通報者に再実験等により再現性を示すことを求めた場合又は被通報者が自らの意思によりそれを申し出た場合は、再実験等に要する期間及び機会(機器、経費等を含む。)を保障するものとする。ただし、被通報者により同じ内容の申出が繰り返して行われた場合において、それが当該事案の引き延ばしを主な目的とするものであると本調査委員会が判断するときは、当該申出を認めないものとする。
10 本調査委員会は、本調査の実施に当たり、被通報者に対して弁明の機会を与えなければならない。
11 本調査委員会の本調査に対し、通報者、被通報者その他当該通報等された事案に関係する者は誠実に協力しなければならない。
(本調査の対象)
第27条 本調査の対象は、通報等された事案に係る研究のほか、本調査委員会の判断により本調査に関連した被通報者の他の研究を含めることができる。
(証拠の保全)
第28条 本調査委員会は、本調査に当たって、通報等された事案に係る研究活動に関して、証拠となる資料及びその他関係書類等を保全する措置をとる。この場合において、研究活動が行われた研究機関等が本学でないときは、本調査委員会は、通報等された事案に係る研究に関して、証拠となる資料及びその他関係書類等を保全する措置をとるように当該研究機関等に依頼するものとする。
2 本調査委員会は、証拠となる資料及びその他関係書類等の入手が困難又は隠蔽が行われるおそれがある場合には、必要最小限の範囲で通報等された事案に係る研究活動の停止措置、本調査事項に関連する場所の一時閉鎖又は機器・資料の保全措置をとることができる。この場合において、当該措置をとるに当たっては、当該部局長にその旨通知するものとする。
3 本調査委員会は、前2項の措置に影響しない範囲内であれば、被通報者の研究活動を制限してはならない。
(調査における研究又は技術上の情報の保護)
第29条 本調査委員会は、本調査対象における公表前のデータ、論文等の研究又は技術上秘密とすべき情報が、本調査の遂行上必要な範囲外に漏洩することのないよう十分配慮するものとする。
(本調査の中間報告)
第30条 最高管理責任者は、通報等された事案に係る資金配分機関の求めに応じ、本調査の終了前であっても、本調査の中間報告を当該資金配分機関に提出するものとする。
(不正行為の疑惑に対する説明責任)
第31条 本調査委員会の本調査において、被通報者が不正行為に係る通報等に関する疑いを正そうとする場合、被通報者は、自己の責任において、当該研究が科学的に適正な方法及び手続に従い行われたこと並びに論文等が科学的に適正な方法及び手続を経て導かれた結果に基づき、適切な表現で執筆されたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。この場合において、再現実験等を必要とするときは、被通報者に対し再現実験等に要する期間及び機会(機器、経費等を含む。)を保障するものとする。
第6章 不正行為等の認定
(認定)
第32条 本調査委員会は、本調査によって得られた、物的・科学的証拠、証言、被通報者の自認等の諸証拠及び前条により被通報者が行った説明の内容を総合的に判断して、不正行為に該当するか否かの認定(以下「認定」という。)を本調査開始後概ね150日以内に行わなければならない。
2 本調査委員会は、被通報者の研究体制、データチェックの方法等について、故意の有無を判断し認定するものとする。
3 本調査委員会は、認定を行うに当たり、被通報者の自認を唯一の証拠として研究活動における不正行為の存否に係る認定を行うことはできない。
4 本調査委員会は、被通報者の説明及びその他の証拠によって、不正行為であるとの疑いを覆すことができないときは、不正行為と認定することができる。また、研究データの不存在等、本来存在するべき基本的な要素が不足していることにより、被通報者が不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せないときも同様とする。ただし、被通報者が善良な管理者の注意義務を履行していたにもかかわらず、その責によらない理由により基本的な要素が十分に示すことができなくなった場合等正当な理由があると認められる場合は、この限りではない。
5 本調査委員会は、不正行為に該当する旨の認定を行う場合は、不正行為の内容、不正行為に関与した者及びその関与の程度、不正行為が認められた研究に係る論文等の各著者の役割を具体的に確定させるものとする。
6 本調査委員会は、不正行為に該当しない旨の認定を行う場合において、本調査を通じて通報等が悪意によるものであることが判明したときは、併せてその旨の認定を行うものとする。この場合において、当該認定を行うに当たっては、当該通報者に弁明の機会を与えなければならない。
7 本調査委員会は、認定が終了したときは、直ちに対策委員会委員長及び最高管理責任者にその結果を報告する。
(調査結果の通知)
第33条 最高管理責任者は、前条第7項の報告を基に、調査結果及び認定を速やかに通報者及び被通報者(被通報者以外で不正行為に関与したと認定された者を含む。以下同じ。)に通知するとともに、当該資金配分機関及び文部科学省に通知する。この場合において、被通報者が本学以外の機関に所属しているときは、当該所属機関にも通知するものとする。
2 最高管理責任者は、通報等がなされる前に取り下げられた論文等に係る本調査で、不正行為に該当する旨の認定をされたときは、研究者が自ら行った論文等の取り下げなどの善後措置及びその措置をとるに至った経緯・事情等を前項の通知に付すものとする。
3 最高管理責任者は、悪意による通報等と認定された場合において、通報者が本学以外の機関に所属しているときは、当該所属機関にも通知するものとする。
(調査資料の提出)
第34条 最高管理責任者は、本調査が継続中であっても、資金配分機関から当該事案に係る資料の提出又は閲覧を求められた場合は、本調査に支障がある等正当な理由があるときを除き、これを拒むことができない。
第7章 不服申立て及び再調査
(不服申立て及び再調査)
第35条 不正行為に該当する旨の認定が行われた被通報者及び悪意による通報等をしたものとして認定された通報者(被通報者の不服申立てによる再調査の結果、悪意による通報等をしたものと認定された者を含む。以下同じ。)は、第32条第1項による通知を受けた日から起算して30日以内(再調査の結果、悪意による通報等をしたものと認定された者については、本条第9項に規定する通知を受けた日から起算して30日以内)に最高管理責任者に対して不服申立てを行うことができる。ただし、その期間内であっても、同一理由による不服申立てを繰り返し行うことはできない。
2 最高管理責任者は、前項の規定による不服申立てがあった場合は、当該資金配分機関及び文部科学省に通知するとともに、当該不服申立ての審査を対策委員会委員長に対し指示するものとする。
3 対策委員会委員長は、第1項の不服申立てについて、当該認定を行った本調査委員会に不服申立ての審査及び再調査を実施する場合の審査をさせるものとする。
4 本調査委員会は、不服申立ての趣旨、理由等を勘案し、不服申立ての却下又は再調査の実施を速やかに決定し、対策委員会委員長及び最高管理責任者にその結果を報告する。
5 最高管理責任者は、前項の報告を受けたときは、当該申立てを行った者(以下「申立者」という。)並びに当該資金配分機関及び文部科学省に通知する。不服申立てについて、再調査を行うことなく、不服申立てを却下すべきものと決定された場合には、当該不服申立てが当該事案の引き延ばし又は認定に伴う各措置の先送りを主な目的とすると本調査委員会が判断するときは、最高管理責任者は、申立者に対し以後の不服申立てを受け付けないことを併せて通知するものとする。
6 本調査委員会は、再調査を行う決定をした場合は、申立者に対して、先の調査結果を覆すに足る資料の提出等、当該事案の速やかな解決に向けて、再調査に協力することを求めるものとする。
7 本調査委員会は、前項に規定する場合において、再調査に対し協力が得られないことにより、再調査を行わず、審査を打ち切ることを決定した場合は、直ちに対策委員会委員長及び最高管理責任者に報告し、最高管理責任者は、当該申立者に対して当該決定を通知するとともに、当該資金配分機関及び文部科学省に通知する。
8 本調査委員会は、再調査を実施した場合は、再調査開始後概ね50日以内に、先の調査結果を変更するか否かを決定し、その結果を直ちに対策委員会委員長及び最高管理責任者に報告する。
9 最高管理責任者は、前項の規定による調査結果の報告を受けた場合において、当該結果を通報者及び被通報者に通知するとともに、当該資金配分機関及び文部科学省に通知する。
(調査の公正性に関する不服申立て)
第36条 不正行為が行われたものと認定された被通報者及び悪意による通報等をしたものとして認定された通報者が、前条に規定する不服申立てを行う場合において、当該申立ての趣旨が、本調査委員会の構成等、調査の公正性に係るものであるときは、最高管理責任者に対して不服申立てを行うことができる。
2 最高管理責任者は、前項による不服申立てが行われた場合、対策委員会委員長、各理事及び各副学長と協議し、当該不服申立てを受理するか否か決定するものとする。この場合において、当該不服申立てを受理することを決定し、当該不服申立ての内容が、本調査委員会委員に関するものの場合、当該不服申立ての対象となった本調査委員会委員に代えて、他の者を委員とすることができる。
第8章 調査結果の公表等
(調査結果の公表)
第37条 最高管理責任者は、不正行為に該当する旨の認定がなされた場合は、原則として速やかに調査結果を公表する。
2 不正行為に該当する旨の認定がなされた場合における公表の内容は、次の各号に掲げるとおりとする。ただし、通報等がなされる前に取り下げられた論文等において不正行為に該当する旨の認定が行われたときは、当該不正行為に係る者の氏名・所属を公表しないことができる。
(1) 不正行為に関与した者の氏名・所属
(2) 不正行為の内容
(3) 当該調査結果の公表時までに本学が行った措置の内容
(4) 対策委員会委員の氏名・所属
(5) 調査の方法・手順
(6) その他必要と判断した事項
3 最高管理責任者は、不正行為に該当しない旨の認定がなされた場合は、原則として調査結果を公表しない。ただし、公表までに調査事案が外部に漏洩していた場合は、調査結果を公表し、その公表の内容は、次の各号に掲げるとおりとする。
(1) 不正行為には該当しないこと
(2) 被通報者の氏名・所属
(3) 対策委員会委員の氏名・所属
(4) 調査の方法・手順
(5) その他必要と判断した事項
4 最高管理責任者は、不正行為に該当しない旨の認定がなされた場合で、調査の結果通報等が悪意によるものであることが判明し、悪意による通報等の認定がなされた場合は、次の各号に掲げるとおり公表する。
(1) 通報者の氏名・所属
(2) 悪意による通報等と認定した理由
(3) その他必要と判断した事項
(最終報告書の提出)
第38条 最高管理責任者は、調査結果、不正発生要因、不正に関与した者が関わる当該研究費以外の研究費の管理及び監査体制の状況、再発防止計画等を含む最終報告書を資金配分機関に提出するものとする。
第9章 措置及び処分
(調査中における一時的措置)
第39条 最高管理責任者は、調査を行うことを決定した後、対策委員会の調査結果の報告を受けるまでの間、調査の対象となる被通報者の研究費の支出停止等必要な措置を一時的に講じることができる。
2 最高管理責任者は、資金配分機関から、被通報者の当該研究費の支出停止等を命ぜられた場合は、資金配分機関の指示に従い必要な措置を講じる。
(研究費の使用中止)
第40条 最高管理責任者は、不正行為に該当する旨の認定がなされた場合は、不正行為に関与した者に対して直ちに当該研究費の使用中止を命ずる。
2 前項に規定するほか、不正行為に関与した者と直ちに認定されないが、不正行為が認定された論文等の内容について責任を負う者として認定された者(以下「被認定者」という。)に対しても、不正行為に関与した者と同様に直ちに当該研究費の使用中止を命ずる。
(論文等の取り下げの勧告)
第41条 最高管理責任者は、被認定者に対して不正行為と認定された論文等の取り下げ、訂正又はその他の措置を勧告するものとする。
2 被認定者は、前項の勧告を受けた日から起算して14日以内に勧告に応ずるか否かの意思表示を最高管理責任者に行わなければならない。
3 最高管理責任者は、被認定者が第1項の勧告に応じない場合は、その事実を公表するものとする。
(措置の解除等)
第42条 最高管理責任者は、不正行為に該当しない旨の認定がなされた場合は、調査の対象とした研究費の支出停止等の措置を速やかに解除するものとする。ただし、証拠保全の措置については、不服申立てがないまま申立期間が経過した後又は不服申立ての審査結果が確定した後、速やかに解除するものとする。
2 最高管理責任者は、不正行為に該当しない旨の認定がなされた場合は、当該事案が研究活動における不正行為に該当しない旨を調査関係者に対して周知する。この場合において、当該事案が調査関係者以外に漏洩しているときは、調査関係者以外にも同様に周知する。
3 前2項に規定するもののほか、最高管理責任者は、不正行為に該当しない旨認定された者の名誉を回復するために必要な措置及び不利益を生じさせないために必要な措置を講じる。
4 最高管理責任者は、不正行為に該当しない旨の認定がなされた場合で、調査を通じて通報が悪意によるものであることが判明し、悪意による通報等の認定がなされた場合、次の各号により対処するものとする。
(1) 通報者が本学に所属する者である場合 学内規程に基づき、懲戒処分、刑事告発等の適切な措置をとり、その結果を公表するものとする。
(2) 通報者が本学以外の機関に所属する者である場合 当該者の所属する機関に対して適切な処置を行うように求めるものとする。
(処分)
第43条 学長は、本調査の結果、不正行為と認定された場合において、不正行為に関与した者が本学の職員である場合、当該不正行為に関与した者に対して就業規則等に従って、処分を課すものとする。
2 各部局長において、管理監督の責任が十分に果たされず、結果として不正行為を招いた場合には、前項の規定に準じて取り扱うものとする。
3 最高管理責任者は、前項により処分を課したときは、当該資金配分機関に対して処分内容等を通知する。
(是正措置等)
第44条 対策委員会委員長は、本調査の結果、不正行為が行われたものと認定した場合は、最高管理責任者に対して速やかに是正、再発防止及びその他必要な措置(以下「是正措置等」という。)を講じる必要がある旨の申出を行うものとする。
2 最高管理責任者は、前項の申出に基づき、当該部局長に対して是正措置等を講じる旨を命ずるとともに、必要に応じて全学的な是正措置等を講じるものとする。
3 部局長等は、前項の命により是正措置等を講じたときは、当該是正措置等の内容を最高管理責任者に報告するものとする。
4 最高管理責任者は、第2項に基づいて行った是正措置等及び前項により報告を受けた是正措置等の内容を当該通報者及び当該資金配分機関に対して通知するものとする。
(関係機関への通知)
第45条 最高管理責任者は、調査を開始したとき及び不正行為に該当すると認定されたときその他必要の都度、資金配分機関以外の関係機関に対して当該不正行為の内容、調査結果、是正措置等、処分内容等について通知するものとする。
第10章 雑則
(細則)
第46条 この規程に定めるもののほか、この規程の実施に関し必要な事項は、学長が別に定める。
附 則
1 この規程は、平成27年4月1日から施行する。
2 上越教育大学の研究活動における行動規範及び不正行為への対応に関する規程(平成19年規程第9号)及び上越教育大学の研究活動における不正行為への対応に関する取扱細則(平成19年細則第7号)は、廃止する。
附 則(平成28年規程第5号(平成28年1月18日))
この規程は、平成28年1月18日から施行する。
附 則(令和3年規程第25号(令和3年9月10日))
この規程は、令和3年9月10日から施行する。