○奈良女子大学動物実験等に関する規程
| (平成29年3月14日規程第78号) |
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第1章 総則
(趣旨)
第1条 この規程は、「動物の愛護,管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号。以下「法」という。)、「実験動物の飼養,保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28日環境省告示第88号。以下「飼養保管基準」という。)、 研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年文部科学省告示第71号)。以下「基本指針」という。)、「動物の殺処分方法に関する指針」(平成7年総理府告示第40号。以下「殺処分指針」という。)等(以下「法令等」という。)に基づくとともに、日本学術会議が作成した「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン(平成18年6月)」(以下「ガイドライン」という。)を踏まえ、科学的観点、動物愛護の観点、環境保全の観点及び動物実験等を行う職員・学生等の安全確保の観点から、奈良女子大学(以下「本学」という。)における実験動物の飼養及び保管に係る管理運営体制の整備、並びに動物実験等の実施方法について必要な事項を定める。
(基本原則)
第2条 動物実験等の実施に当たっては、法及び飼養保管基準に則し、動物実験等の原則である次に掲げる3R(Replacement、Reduction、Refinement)に基づき、適正に実施しなければならない。
(1) 代替法の利用(Replacement) 科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること。
(2) 使用数の削減(Reduction) 科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により実験動物を適切に利用することに配慮すること。
(3) 苦痛の軽減(Refinement) 科学上の利用に必要な限度において、できる限り動物に苦痛を与えない方法によってしなければならないこと。
2 実験動物の飼養及び保管に当たっては、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、動物福祉の基本理念である次に掲げる5つの自由に配慮して実施しなけらばならない。
(1) 飢え及び渇きからの解放
(2) 肉体的不快感及び苦痛からの解放
(3) 傷害及び疾病からの解放
(4) 恐怖及び精神的苦痛からの解放
(5) 本来の行動様式に従う自由
(定義)
第3条 この規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 実験動物 動物実験等の利用に供するため、施設で飼養し、又は保管している哺乳類、鳥類及び爬虫類に属する動物(施設に導入するために輸送中のものを含む。)をいう。
(2) 動物実験等 実験動物を教育,試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
(3) 飼養保管施設 実験動物を恒常的に飼育もしくは保管又は動物実験等を行う施設・設備をいう。
(4) 実験室 実験動物への実験操作(48 時間以内の一時的保管を含む。)を行う施設・設備をいう。
(5) 施設等 飼養保管施設及び実験室をいう。
(6) 動物実験計画 動物実験等の実施に関する計画をいう。
(7) 動物実験実施者 動物実験等を実施する者をいう。
(8) 動物実験責任者 動物実験実施者のうち、動物実験等の実施に関する業務を統括する者をいう。
(9) 管理者 学長の命を受け、実験動物及び施設等の管理を担当する総括的な責任者をいう。
(10) 実験動物管理者 実験動物に関する知識及び経験を有し、飼養保管施設において管理者を補佐し、実験動物の管理を担当する者をいう。
(11) 飼養者 実験動物管理者又は動物実験実施者の下で実験動物の飼養又は保管に従事する者をいう。
(12) 管理者等 学長、管理者、実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者をいう。
(13) 指針等 基本指針及び厚生労働省、農林水産省から示されている動物実験等の実施に関する基本指針並びにガイドラインをいう。
第2章 適用範囲
(適用範囲)
第4条 この規程は,本学において実施される哺乳類、鳥類、爬虫類の生体を用いる全ての動物実験等に適用する。
2 動物実験責任者は、動物実験等の実施を本学以外の機関に委託等する場合、委託先においても、法令等に基づき、適正に動物実験等が実施されることを確認する。
第3章 組織
(学長の責務)
第5条 学長は、最終的な責任者として本学における動物実験等の適正な実施並びに実験動物の飼養及び保管を統轄する。
2 学長は、実験計画の承認、実験計画の実施状況及び結果の把握とその結果に基づく改善措置、飼養保管施設の整備、並びに飼養保管施設及び実験室の承認、動物実験等に係る安全管理、教育訓練、自己点検・評価、外部の専門家による検証、情報公開、その他動物実験等の適正な実施に必要な措置に関して責務を負う。
3 学長の下に、前項の責務を遂行するための報告又は助言を行う組織として、奈良女子大学動物実験委員会規程(令和7年度女子大規程第31号)に定める奈良女子大学動物実験委員会(以下「委員会」という。)を置く。
第4章 動物実験の実施計画
(動物実験計画の立案,申請及び承認)
第6条 動物実験責任者は、動物実験等により取得されるデータの信頼性を確保する観点から、次に掲げる事項を踏まえて動物実験計画を立案し、所定の動物実験計画書を学長に申請する。
(1) 研究の目的,意義及び必要性
(2) 代替法を考慮して、実験動物を適切に利用すること。
(3) 実験動物の使用数削減のため、動物実験等の目的に適した実験動物種の選定、動物実験成績の精度と再現性を左右する実験動物の数、遺伝学的及び微生物学的品質並びに飼養条件を考慮すること。
(4) 苦痛の軽減により動物実験等を適切に行うこと。
(5) 致死的な毒性試験、感染実験、放射線照射実験等の苦痛度の高い動物実験等を行う場合は、動物実験等を計画する段階で人道的エンドポイント(実験動物を激しい苦痛から解放するための実験を打ち切るタイミング)の設定を検討すること。
2 学長は、動物実験責任者からの動物実験計画の申請について、委員会の審査を経て、承認又は非承認を決定し、その結果を当該動物実験責任者に通知する。
3 動物実験責任者は、動物実験計画について学長の承認を得た後でなければ、動物実験等を行うことができな
い
4 動物実験責任者は、年度ごとに動物実験継続申請書を学長に提出し、承認を得なければならない。
5 動物実験責任者は、動物実験計画を変更する場合は、改めて動物実験計画の変更申請を行い第2項と同様に学長の承認を得なければならない。
(実験操作)
第7条 動物実験実施者は、動物実験等の実施にあたっては、法令等に則するとともに、次に掲げる事項を遵守する。ただし、病原体を用いる動物実験等の実施は原則として認めない。
(1) 適切に維持管理された施設等において動物実験等を行うこと。
(2) 動物実験計画書に記載された事項及び次に掲げる事項を遵守すること。
イ 適切な麻酔薬、鎮痛薬等の利用
ロ 実験の終了の時期(人道的エンドポイントを含む。)の配慮
ハ 適切な術後管理
二 適切な安楽死の選択
(3) 安全管理に注意を払うべき実験(物理的、化学的に危険な材料、麻薬・向精神薬等、遺伝子組換え動物等を用いる実験)については、関係法令等及び本学における関連する規程等に従うこと。
(4) 物理的、化学的に危険な材料を扱う動物実験等について、安全のための適切な施設や設備を確保すること。
(5) 実験実施に先立ち必要な実験手技等の習得に努めること。
(6) 侵襲性の高い大規模な存命手術に当たっては、経験等を有する者の指導下で行うこと。
(実験終了後の処置)
第8条 動物実験責任者は、動物実験等の終了後(中止を含む。)、所定の様式により、使用動物数、計画からの変更の有無、成果等の動物実験計画の実施の結果を学長に報告する。
2 学長は、前項の報告について、必要に応じて委員会の助言を受けて適正な動物実験等の実施のための改善措置を講ずる。
3 実験実施者は,学長の承認を得た飼養保管施設でなければ,飼養及び保管又は動物実験等を行うことができない。
第5章 動物実験の実施並びに実験動物の飼養及び保管
(マニュアル(標準操作手順)の作成と周知)
第9条 管理者及び実験動物管理者は、飼養保管のマニュアルを定め、動物実験実施者及び飼養者に周知し、遵守させる。
(実験動物の健康及び安全の保持)
第10条 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は,飼養保管基準を遵守し,実験動物の健康及び安全の保持に努める。
(実験動物の導入)
第11条 管理者は,関連法令や指針等に基づき適正に管理されている機関から実験動物を導入する。
2 実験動物管理者は,実験動物の導入に当たり,適切な検疫,隔離飼育等を行う。
3 実験動物管理者は,実験動物の飼養環境への順化・順応を図るための必要な措置を講じる。
(給餌・給水)
第12条 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、実験動物の種類、生理、生態、習性等に応じて、適切に給餌・給水を行うものとする。
2 実験動物管理者は、飼養保管施設の日常的な管理及び保守点検並びに定期的な巡回等により、 飼養又は保管をする実験動物の数及び状態の確認が行われるようにする。
(実験動物の飼養管理)
第13条 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、実験目的以外の傷害や疾病を予防するため、実験動物に必要な健康管理を行う。
2 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、実験目的以外の傷害や疾病にかかった場合、実験動物に適切な治療等を行う。
(異種又は複数動物の飼育)
第14条 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、異種又は複数の実験動物を同一施設内で飼養又は保管する場合、その組み合わせを考慮した収容を行うものとする。
(記録の保存及び報告)
第15条 管理者等は、実験動物の入手先、飼育履歴、病歴等に関する記録を整備し、保存する。
2 管理者は,年度ごとに飼養保管した実験動物の種類と数等について,学長に報告する
(譲渡等の際の情報提供)
第16条 管理者等は、実験動物の譲渡に当たり、その特性、飼養保管の方法、感染性疾病等に関する情報を提供する。
(輸送)
第17条 管理者等は、実験動物の輸送に当たり、飼養保管基準を遵守し、実験動物の健康及び安全の確保並びに人への危害防止に努める。
第6章 施設
(飼養保管施設の設置)
第18条 管理者は,飼養保管施設を設置又は変更する場合は,所定の申請書を提出し,学長の承認を得る。
2 学長は、申請された飼養保管施設を委員会に調査させ、その助言により、承認又は非承認を決定し、管理者に通知する。
3 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、学長の承認を得た飼養保管施設でなければ、実験動物の飼養及び保管又は動物実験等を行うことができない。
4 学長は、実験動物の飼養及び保管の状況について管理者及び実験動物管理者から報告させ、必要な場合は委員会の助言を受けて改善を指示する。
第19条 飼養保管施設は、次に掲げる条件を満たすものとする。
(1) 適切な温度、湿度、換気、明るさ等を保つことができる構造等とすること。
(2) 実験動物の種類や生理、生態、習性等、並びに飼養又は保管する数に応じた飼育設備を有すること。
(3) 床や内壁などの清掃、消毒等が容易な構造で、器材の洗浄や消毒等を行う衛生設備を有すること。
(4) 実験動物が逸走しない構造及び強度を有すること。
(5) 臭気、騒音、廃棄物等による周辺環境への悪影響を防止する措置がとられていること。
(6) 実験動物管理者を配置すること。
(実験室の設置)
第20条 管理者は、実験室を設置又は変更する場合は、所定の設置申請書を提出し、学長の承認を得る。
2 学長は、申請された実験室を委員会に調査させ、その助言により、承認又は非承認を決定し、管理者に通知する。
3 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、学長の承認を得た実験室でなければ、当該実験室での動物実験等(48時間以内の一時的保管を含む。)を行うことができない。
第21条 実験室は、次に掲げる要件を満たさなければならない。
(1) 実験動物が逸走しない構造及び強度を有し、実験動物が室内で逸走しても捕獲しやすい環境が維持されていること。
(2) 排泄物や血液等による汚染に対して清掃や消毒が容易な構造であること。
(3) 常に清潔な状態を保ち、臭気、騒音、廃棄物等による周辺環境への悪影響を防止する措置がとられていること。
(施設の維持管理)
第22条 管理者は、動物実験等が適切かつ円滑に実施されるよう必要な施設を整備し、維持管理及び改善に努める。
2 管理者は、実験動物の種類、生理、生態、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行う。
(施設の廃止)
第23条 管理者は、施設を廃止する場合は、所定の廃止届を学長に届け出る。
2 学長は、前項の届出について委員会による調査等を経て廃止を承認する。
3 管理者は、必要に応じて、動物実験責任者と協力し、飼養又は保管中の実験動物を他の飼養保管施設に譲り渡すよう努める。
第7章 安全管理
(危害防止)
第24条 管理者は,逸走した実験動物の捕獲の方法等をあらかじめ定める。
2 管理者は、人に危害を加える等の恐れのある実験動物が施設外に逸走した場合には、速やかに関係機関へ連絡する。
3 管理者は、実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者が、実験動物由来の感染症やアレルギー疾患等に罹患したり、実験動物による咬傷等に対して、予防及び発生時に必要な措置を講ずる。
4 管理者は、毒へび等の有毒動物の飼養又は保管をする場合は、人への危害の発生の防止のため、飼養保管基準に基づき必要な事項を別途定める。
5 管理者等は、人に危害を加える等のおそれがある実験動物について、名札、脚環、マイクロチップ等の装着等の識別措置を技術的に可能な範囲で講じるように努める。
6 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、相互に実験動物による危害の発生の防止に必要な情報の提供等を行うよう努める。
7 管理者等は、実験動物の飼養や動物実験等の実施に関係のない者が実験動物等に接触しないよう、必要な措置を講じる。
(緊急時の対応)
第25条 管理者は,地震、火災、人と動物の共通感染症の発生時等の緊急時に執るべき措置の計画(緊急時対応マニュアル等)をあらかじめ作成し、関係者に対して周知を図る。
2 管理者等は、緊急事態発生時において、実験動物の保護、実験動物の逸走による人への危害、環境保全上の問題等の発生の防止に努める。
(人と動物の共通感染症の対応)
第26条 実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者は、人と動物の共通感染症に関する十分な知識の習得及び情報の収集に努める。
2 管理者、実験動物管理者及び動物実験実施者は、人と動物の共通感染症の発生時において必要な措置を迅速に講じることができるよう、公衆衛生機関等との連絡体制の整備に努める。
第8章 その他
(教育訓練等の実施)
第27条 学長は、実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者に、次に掲げる事項に関する所定の教育訓練を受講させる。
(1) 法令等、本学の定める規程等
(2) 動物実験等の方法に関する基本的事項
(3) 実験動物の飼養又は保管に関する基本的事項
(4) 安全確保及び安全管理に関する事項
(5) 人と動物の共通感染症に関する事項
(6) その他、適切な動物実験等の実施に関する事項
2 学長は、教育訓練の実施日、教育内容、講師及び受講者名の記録を保存する。
3 学長は、実験動物管理者、動物実験実施者及び飼養者の別に応じて必要な教育訓練が確保されるよう努める。
(自己点検・評価及び検証)
第28条 委員会は、基本指針への適合性及び飼養保管基準の遵守状況に関し、毎年、自己点検・評価を行う。
2 委員会は、動物実験等の実施状況等や飼養保管状況に関する自己点検・評価の結果を学長に報告しなければならない。
3 委員会は、管理者、実験動物管理者、動物実験責任者及び飼養者等に、自己点検・評価のための資料の提出を求めることができる。
4 学長は、自己点検・評価の結果について、外部の専門家による検証を定期的に実施する。
(情報公開)
第29条 学長は、本学における動物実験等に関する情報(動物実験等に関する規程、実験動物の飼養又は保管の状況、自己点検・評価、外部の専門家等による検証の結果、動物実験委員会の構成等の情報)を毎年1回程度公表する。
(実験動物以外の動物)
第30条 第3条第1号に定める実験動物以外の動物を動物実験等に供する場合においても、飼養保管基準の趣旨に沿って行うよう努める。
[第3条第1号]
(雑則)
第31条 この規程のほか,動物実験等の適正な実施について必要な事項は学長が別に定める。
附 則
1 この規程は,平成29年4月1日から施行する。
2 奈良女子大学における動物実験等に関する指針(平成17年3月17日制定)は,廃止する。
附 則(令和2年9月16日規程第50号)
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この規程は、令和2年10月1日から施行する。
附 則(令和4年4月1日女子大規程第69号)
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この規程は、令和4年4月1日から施行する。
附 則(令和7年9月17日女子大規程第32号)
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この規程は、令和7年10月1日から施行する。