○奈良女子大学動物実験等に関する規程
(平成29年3月14日規程第78号)
改正
令和2年9月16日規程第50号
令和4年4月1日女子大規程第69号
第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は,「動物の愛護,管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号),「実験動物の飼養,保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28日環境省告示第88号。以下「飼養保管基準」という。),文部科学省が策定した「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月)」及び「動物の殺処分方法に関する指針」(平成7年総理府告示第40号)等に定められたもののほか,奈良女子大学(以下「本学」という。)において動物実験等を立案し,実施する場合に遵守すべき基本事項を示し,科学的にはもとより動物愛護の観点からも適正な動物実験等の実施を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この規程において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
(1) 実験動物 動物実験等の利用に供するため,施設で飼養し,又は保管している哺乳類,鳥類及び爬虫類に属する動物(施設に導入するために輸送中のものを含む。)をいう。
(2) 動物実験等 実験動物を教育,試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
(3) 飼養保管施設 実験動物を恒常的に飼育もしくは保管又は動物実験等を行う施設・設備をいう。
(4) 実験室 実験動物への実験操作を行う施設・設備をいう。
(5) 施設 飼養保管施設及び実験室をいう。
(6) 施設長 奈良女子大学動物実験施設規程第3条第1項第一号に定める者をいう。
(7) 実験動物管理者 実験動物に関する業務を統括する者をいう。
(8) 実験実施者 動物実験等を行う者をいう。
(9) 実験責任者 実験実施者のうち,動物実験等の実施に関する業務を統括する者をいう。
(10) 施設責任者 施設の申請・管理・整備等に関する業務を統括する者をいう。
(11) 実験計画 動物実験等の実施に関する計画をいう。
(12) 基本指針 動物実験等に関して行政機関の定める基本指針及びガイドラインをいう。
第2章 組織
(学長の責務)
第3条 学長は,本学における動物実験等の実施に関する最終的な責任を有し,実験計画の承認,実験計画の実施結果の把握,施設の承認,教育訓練,自己点検・評価及び検証,情報公開,その他動物実験等の適正な実施のために必要な措置を講ずるものとする。
2 学長は,動物実験等の開始前に実験責任者に実験計画を申請させ,その実験計画について奈良女子大学動物実験施設規程第6条に規定する動物実験施設運営委員会(以下「運営委員会」という。)の審査を経てその申請を承認,又は却下するものとする。
3 学長は,動物実験等の終了の後,実験責任者から実験計画の実施結果について報告を受け,必要に応じ適正な動物実験等の実施のための改善措置を講ずるものとする。
(動物実験倫理審査専門委員会)
第4条 運営委員会は,この規程の適正な運用を図り,動物実験等の立案,実施等に関して指導,助言等を行うため,奈良女子大学動物実験施設運営委員会規則第7条に規定する動物実験倫理審査専門委員会(以下「倫理審査委員会」という。)を置くことができる。
2 倫理審査委員会は,次の各号に掲げる業務を実施する。
(1) 施設長の諮問を受け,実験責任者が申請した実験計画が動物実験等に関する法令及び学内規程に適合しているかどうかの審査を実施し,その結果を施設長に報告するものとする。
(2) 施設長より実験計画の実施結果について報告を受け,必要に応じ助言を行うことができる。
3 倫理審査委員会は,施設長が次の各号に掲げる者から任命した委員により構成することとし,その役割を十分に果たすのに適切となるよう配慮する。
(1) 動物実験等に関して優れた識見を有する者
(2) 実験動物に関して優れた識見を有する者
(3) その他学識経験者
4 倫理審査委員会に関し必要な事項は,運営委員会が別に定める。
第3章 適用範囲
(適用範囲)
第5条 この規程は,本学において実施される実験動物等に適用する。
2 実験責任者は,動物実験等の実施を本学以外の機関に委託等する場合,委託先においても,動物実験等に関する法令,基本指針及び飼養保管基準等に基づき,動物実験等が適正に実施されることを確認しなければならない。
第4章 動物実験の実施計画
(動物実験計画の立案,申請及び承認)
第6条 実験責任者は,動物実験等により取得されるデータの信頼性を確保する等の観点から,次に掲げる各号を踏まえて実験計画を立案し,所定の動物実験計画書を学長に提出するものとする。
(1) 代替法の利用 動物実験等の実施に当たっては,科学上の利用の目的を達することができる範囲において,できる限り実験動物を供する方法に代わり得るものを利用すること等により実験動物を適切に利用することに配慮するものとする。
(2) 実験動物の選択 動物実験等の実施に当たっては,科学上の利用の目的を達することができる範囲において,できる限りその利用に供される実験動物の数を少なくすること等により実験動物を適切に利用することに配慮する。この場合において,動物実験等の目的に適した実験動物種の選定,動物実験成績の精度及び再現性を左右する実験動物の数,遺伝学的及び微生物学的品質並びに飼養条件を考慮する必要があるものとする。
(3) 苦痛の軽減 動物実験等の実施に当たっては,動物実験等に関する法令及び飼養保管基準を踏まえ,科学上の利用に必要な限度において,できる限りその実験動物に苦痛を与えない方法により実施するものとする。
2 学長は,実験責任者から動物実験計画書の提出を受けた時は,運営委員会に審査を付議し,その結果を当該実験責任者に通知する。
3 実験実施者は,動物実験計画について学長の承認を得た後でなければ,実験を行うことができない。
4 実験責任者は,年度ごとに動物実験継続申請書を学長に提出し,承認を得なければならない。
5 実験責任者は,動物実験計画を変更する場合は,改めて動物実験計画書を学長に提出しなければならない。
6 実験責任者は,動物実験計画を中止もしくは終了したときは,動物実験終了報告書を学長に提出しなければならない。
(安全管理に特に注意を払う必要がある動物実験等)
第7条 学長は,安全管理に特に注意を払う必要がある動物実験等を実施する際には,次に掲げる各号に配慮するものとする。
(1) 物理的,化学的な材料若しくは病原体を取り扱う動物実験等又は人の安全若しくは健康若しくは周辺環境に影響を及ぼす可能性のある動物実験等を実施する際には,大学における施設の状況を踏まえつつ,実験者の安全の確保及び健康保持について特に注意を払うものとする。
(2) 飼育環境の汚染により実験動物が傷害を受けることのないよう施設を保持するとともに,実験動物の健康保持に配慮するものとする。
(3) 遺伝子組換え動物を用いる動物実験等,生態系に影響を及ぼす可能性のある動物実験等を実施する際には,大学における施設の状況を踏まえつつ,遺伝子組換え動物の逸走防止等に関して特に注意を払うものとする。
第5章 施設
(飼養保管施設の設置)
第8条 施設責任者は,飼養保管施設を設置又は変更する場合は,所定の申請書を提出し,学長の承認を得なければならない。なお,飼養保管施設は次の各号を満たすものでなければならない。
(1) 飼養保管施設は,適切な温度,換気,明るさ等を保つ構造等であり,実験動物が逸走しない構造及び強度を有すること。
(2) 床や内壁などは清掃等衛生管理ができ,臭気,騒音,廃棄物等による周辺環境への配慮がなされていること。
(3) 動物種や飼養保管数等に応じた飼育設備を有すること。
2 学長は,申請された飼養保管施設を運営委員会に調査させ,その助言により,承認又は非承認を決定し,施設責任者に通知する。
3 実験実施者は,学長の承認を得た飼養保管施設でなければ,飼養及び保管又は動物実験等を行うことができない。
(実験室の設置)
第9条 施設責任者は,実験室を設置又は変更する場合は,所定の設置申請書を提出し,学長の承認を得なければならない。なお,実験室は次の各号の要件を満たすものでなければならない。
(1) 実験動物が逸走しない構造及び強度を有し,実験動物が室内で逸走しても捕獲しやすい環境が維持されていること。
(2) 排泄物や血液等による汚染に対して清掃や消毒が容易な構造であること。
(3) 常に清潔な状態を保ち,臭気,騒音,廃棄物等による周辺環境への悪影響を防止する措置がとられていること。
2 学長は,申請された実験室を運営委員会に調査させ,その助言により,承認又は非承認を決定し,施設責任者に通知する。
3 実験実施者は,学長の承認を得た実験室でなければ,当該実験室での動物実験等を行うことができない。
(施設の維持管理)
第10条 施設責任者は,動物実験等が適切かつ円滑に実施されるよう必要な施設を整備し,維持管理及び改善に努めなければならない。
(施設の廃止)
第11条 施設責任者は,施設を廃止する場合は,所定の廃止届を学長に届け出なければならない。
2 施設責任者は,施設の廃止に当たり,必要に応じて,飼養保管中の実験動物を他の飼養保管施設に譲り渡すよう努めるものとする。
第6章 動物実験の実施並びに実験動物の飼養及び保管
(マニュアル(標準操作手順)の作成と周知)
第12条 施設長及び施設責任者は,飼養保管のマニュアルを定め,実験実施者に周知すること。また,変更した場合も同様に行うこととする。
(実験操作)
第13条 実験実施者は,動物実験等の実施にあたっては,麻酔等の手段によって実験動物に無用の苦痛を与えないよう留意するとともに,実験動物の状態を定期的に観察し,必要に応じ適切な措置を講じなければならない。
(実験終了後の処置)
第14条 実験実施者は,動物実験等が終了した動物に対して,適切な安楽死の処置を行うものとする。
2 施設長及び実験責任者は,実験動物の死体及び廃棄物を,焼却等の最終処理に至るまでの間,環境汚染の原因とならないよう隔離し保管しなければならない。
(実験動物の導入)
第15条 施設長は,実験動物の導入に当たり,動物実験等に関する法令,基本指針及び飼養保管基準等に基づき適正に管理されている機関から導入するものとする。
2 実験動物管理者は,実験動物の導入に当たり,必要に応じて適切な検疫,隔離飼育等を行うものとする。
3 実験動物管理者は,実験動物の飼養環境への順化・順応を図るための必要な措置を講ずること。
(実験動物の検収と検疫)
第16条 実験責任者及び実験実施者は,実験動物の飼養・実験環境への導入に際して,実験動物の発注条件との適合,異常,死亡の有無等を確認しなければならない。また,実験等に先立ち,実験動物の健康状態を確認するものとする。
2 必要に応じて,実験動物管理者は購入動物の選定,検収,検疫について,実験責任者に助言を与える。また,実験動物管理者は場合によってはこれらの業務を行うものとする。
(実験動物の健康及び安全の保持)
第17条 実験動物管理者及び実験実施者は,飼養保管基準を遵守し,実験動物の健康及び安全の保持に努めること。
(実験動物の飼養管理)
第18条 動物実験等を実施する際の実験動物の飼養及び保管は,動物実験等に関する法令及び飼養保管基準を踏まえ,科学的観点及び動物の愛護の観点から次の点に配慮して適切に実施すること。
(1) 施設長及び実験動物管理者は,実験実施者と協力して実験中の動物についてはもちろんのこと,施設への導入時から実験の終了に至るすべての期間にわたって,実験動物の状態を子細に観察し,必要に応じ適切な処置を施すものとする。
(2) 実験実施者は,適切な施設の維持管理に努め,適切な給餌,給水及び環境条件の保全等,適切な飼養管理を行うものとする。
(3) 実験実施者は,実験中の動物が実験目的に係る疾病以外の疾病に罹ることを予防するために必要な管理を行うものとする。
(4) 実験実施者は,実験目的以外の傷害や疾病にかかった場合,実験動物に適切な治療等を行うものとする。
2 実験実施者は,実験動物の入手先,飼育履歴,病歴等に関する記録を整備,保存するものとする。
3 実験責任者は,年度ごとに飼養保管した実験動物の種類と数等について,学長に報告するものとする。
(譲渡等の際の情報提供)
第19条 実験責任者は,実験動物の譲渡に当たり,その特性,飼養保管の方法,感染性疾病等に関する情報を提供するものとする。
(輸送)
第20条 実験責任者は,実験動物の輸送に当たり,飼養保管基準を遵守し,実験動物の健康及び安全の確保並びに人への危害防止に努めるものとする。
第7章 安全管理
(危害防止)
第21条 施設長は,逸走した実験動物の捕獲の方法等をあらかじめ定めるものとする。
2 施設長は,人に危害を加える等の恐れのある実験動物が施設外に逸走した場合には,速やかに関係機関へ連絡するものとする。
3 施設長は,実験実施者が,実験動物由来の感染症及び実験動物による咬傷等並びにアレルギー等に対して,予防及び発生時の必要な措置を講じるものとする。
4 施設長は,毒へび等の有毒動物の飼養又は保管をする場合は,人への危害の発生の防止のため,飼養保管基準に基づき必要な事項を別途定めるものとする。
5 施設長は,実験動物の飼養や動物実験等の実施に関係のない者が実験動物等に接触しないよう,必要な措置を講じるものとする。
(緊急時の対応)
第22条 施設長は,地震,火災等の緊急時に執るべき措置の計画をあらかじめ作成し,関係者に対して周知を図るものとする。
2 施設長は,緊急事態発生時において,実験動物の保護,実験動物の逸走による危害防止に努めるものとする。
(人と動物の共通感染症の対応)
第23条 実験動物管理者,実験実施者は,人と動物の共通感染症に関する十分な知識の習得及び情報の収集に努めること。
2 実験動物管理者及び実験実施者は,人と動物の共通感染症の発生時において必要な措置を迅速に講じることができるよう,公衆衛生機関等との連絡体制の整備に努めること。
第8章 その他
(教育訓練等の実施)
第24条 学長は,実験責任者及び実験実施者に対し,動物実験等の実施並びに実験動物の飼養及び保管を適切に実施するために必要な基礎知識の修得を目的とした教育訓練の実施その他実験責任者及び実験実施者の資質向上を図るために必要な措置を講じるものとする。
(自己点検・評価及び検証)
第25条 学長は,動物実験等の実施に関する透明性を確保するため,運営委員会に,動物実験等に関する法令及び本学が定める規程等への適合性に関し,自己点検・評価を実施させるものとする。
2 運営委員会は,当該自己点検・評価を行い,その結果を学長に報告するものとする。
3 学長は,学外者による検証を実施することに努めるものとする。
(情報公開)
第26条 学長は,大学における動物実験等に関する情報を,毎年1回程度,インターネットの利用等その他適切な方法により公表するものとする。
(雑則)
第27条 施設長は,実験動物以外の動物を動物実験等に利用する場合においても,この規程の趣旨を尊重するように努めるものとする。
2 この規程のほか,動物実験等の適正な実施に関して施設長が必要と認める事項については,別に定める。
附 則
1 この規程は,平成29年4月1日から施行する。
2 奈良女子大学における動物実験等に関する指針(平成17年3月17日制定)は,廃止する。
附 則(令和2年9月16日規程第50号)
この規程は、令和2年10月1日から施行する。
附 則(令和4年4月1日女子大規程第69号)
この規程は、令和4年4月1日から施行する。