○琉球大学病院における医師の時間外労働等に関する取扱要項
(令和2年3月17日制定) |
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(趣旨)
第1条 この要項は、琉球大学病院(以下「本院」という。)の診療業務のために、医師に時間外労働又は休日労働(以下「時間外労働等」という。)を命じる場合の取り扱い並びに時間外労働手当及び休日給(以下「手当等」という。)の支給基準等に関し必要な事項を定める。
(定義)
第2条 この要項において次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 「医師」とは、琉球大学上原事業場に勤務する医師免許又は歯科医師免許を有する職員のうち、本院の診療業務に従事する教員及び非常勤職員をいう。
(2) 「所定労働時間」とは、国立大学法人琉球大学医学部・病院職員就業規則、国立大学法人琉球大学医学部・病院非常勤職員就業規則、国立大学法人琉球大学に勤務する職員の労働時間等に関する規程(上原事業場)(以下「労働時間等に関する規程」という。)及び国立大学法人琉球大学に勤務する非常勤職員の労働時間等に関する規程(上原事業場)に定めるところによる。
[国立大学法人琉球大学医学部・病院職員就業規則] [国立大学法人琉球大学医学部・病院非常勤職員就業規則] [国立大学法人琉球大学に勤務する職員の労働時間等に関する規程(上原事業場)(以下「労働時間等に関する規程」という。)]
(3) 「時間外労働等」とは、所定労働時間以外の時間に診療業務を監督する者の指揮命令下に置かれ、明示又は黙示の指示により診療業務に従事することをいう。
(4) 「宿日直」とは、本院を所管する労働基準監督署の許可を得た組織における宿日直をいい、「労働時間等に関する規程」及び「琉球大学病院診療科(部)医師宿日直勤務規程」に定めるところによる。
(5) 「診療業務を監督する者」とは、当該診療業務の遂行のために医師を使用又は指導する者をいい、当該医師が所属する組織の長、医局長、外来医長、病棟医長及び指導医等の上級医(以下「上級医等」という。)のほか、当該診療業務に携わる組織の上級医等を含む。
(6) 「手当等」とは、国立大学法人琉球大学職員給与規程(上原事業場)(以下「給与規程」という。)及び国立大学法人琉球大学非常勤職員給与規程(上原事業場)に定めるところによる。
(7) 「自己研鑽」とは、診療業務の傍ら医師自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習、手技の練習及び臨床研究等をいい、その具体的な内容としては下記が考えられる。
1) 一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習や練習
・ 診療ガイドラインの勉強
・ 新しい治療法や新薬についての勉強
・ 手術や処置等についての予習や振り返り
・ シミュレーターを用いた手技の練習
・ 本院又は所属する組織が参加を義務づけていない診療業務に関する院内研修会への参加
・ 本院又は所属する組織が出席を義務づけていない院内カンファレンス等への出席
2) 学位取得や専門医取得のための研究・論文作成、講習会等の受講
・ 学会や勉強会等の発表準備
・ 本来の診療業務とは区別された臨床研究に係るデータ整理や症例報告の作成、論文執筆
・ 大学院の受験勉強
・ 専門医の取得や更新のための講習会受講
3) 手技を向上させるための手術等見学
・ 手術や処置等の見学(見学中に診療を行うことが常態化している場合は診療業務とする)
2 「時間外労働等時間数の限度」は、労働基準法第36条の規定に基づき上原事業場の職員代表と締結した時間外及び休日労働に関する労使協定書(以下「労使協定書」という。)の定めるところによる。
(病院長の責務)
第3条 琉球大学病院長(以下「病院長」という。)は、医師の労働時間が長時間とならないように勤務負担の軽減や最適な労働環境の確保に努めなければならない。
(労働時間管理者の責務)
第4条 本院の医師が所属する組織に医師の労働時間管理者を置き、当該組織の長(診療部科等の長)をもって充てる。
2 労働時間管理者は、当該組織に所属する医師の時間外労働等及び自己研鑽(所定労働時間内に従事する場合を含む)の実態を確認し、適正に把握しなければならない。
なお、自己研鑽における「診療業務との直接的な関連性」の判断に当たっては、職階の違い、当該医師の経験値、担当している診療業務の状況及び当該医師に求める医療提供水準等を踏まえ、現在の業務上必須か否かを対象医師毎に個別に判断しなければならない。
3 労働時間管理者は、当該組織に所属する医師が自己申告できる時間外労働等時間数に上限を設けること、時間外労働等時間数の限度を超えて労働しているにもかかわらず記録上これを守っているようにすること等、適正な自己申告を阻害するような行為又は措置を設けてはならない。
4 労働時間管理者は、特定の医師に時間外労働等が集中しないように、また、診療業務を監督する者が不必要な時間外労働等を強いることのないように、業務の必要性を考慮しつつ必要に応じて診療体制等を点検又は見直さなければならない。
5 労働時間管理者は、上原事業場の産業保健の仕組みを活用するなどして当該組織に所属する医師の健康管理及び長時間労働の是正に努めなければならない。
(医師の責務)
第5条 医師は、本院の診療業務に携わる者としての使命を自覚し、その職務を誠実に履行しなければならない。
2 医師は、所属する組織の労働時間管理者に対して自身の時間外労働等を適切に申告し、必要に応じて相互に確認しなければならない。
3 医師は、労働時間管理者と協力して労働時間が長時間とならないように自身の時間外労働等を随時点検するとともに、上原事業場の産業保健の仕組みを活用するなどして健康管理に努めなければならない。
(手当等の支給基準)
第6条 手当等の支給対象となる具体的な時間外労働等の業務内容は、次のとおりとする。
(1) 通常勤務時
1) 所定労働時間における業務が、やむを得ず延長した場合
2) 緊急の手術、分娩、検査及び処置等に従事した場合
3) 患者が急変又は死亡する等、突発的な業務に従事した場合
4) 患者やその家族等の都合により、やむを得ず所定労働時間以外の時間に面会又は術前・検査前の説明を行った場合(説明等は所定労働時間内に実施することを原則とする)
5) その他、当該診療業務を監督する者が命じた場合
(2) 宿日直時
1) 通常勤務時と同様の診療業務に従事した場合
2) 緊急の手術、分娩、検査及び処置等に従事した場合
3) 患者が急変又は死亡する等、突発的な業務に従事した場合
4) 患者やその家族等の都合により、面会又は術前・検査前の説明を行った場合(定期的な巡視時における説明等は除く)
5) その他、当該診療業務を監督する者が命じた場合
(3) その他
1) 本院又は所属する組織が参加を義務づける診療業務に関する院内研修会に参加した場合
2) 本院又は所属する組織が出席を義務づける院内カンファレンス等に出席した場合
3) 本院又は他機関が実施する本務地以外での診療活動等(救命活動、ヘリコプター等添乗医師派遣事業、重症患者の付添い等)に職務として従事した場合(出張、研修の申請又は兼業の許可を得ている場合は除く)
4) 業務の都合で、やむを得ず所定休憩時間に休憩を取得できなかった場合のその時間(分)数(所定休憩時間を変更又は分割して取得した場合は除く)
5) 診療業務の準備又は後処理として不可欠な業務に従事した場合
6) 重大事故等の発生又は法令に基づく事情聴取、現場立ち会い若しくは照会等に対応する場合
7) 災害時等、避けられない事由により緊急に必要が生じた場合
(手当等の支給対象外)
第7条 手当等の支給対象外となる具体的な時間外労働等の業務内容は、次のとおりとする。
(1) 診療以外の業務に従事した場合(労使協定書に定めのあるものは除く)
(2) 本院若しくは所属する組織が参加又は出席を義務づけていない院内研修会や院内カンファレンスに医師の自由な意思に基づき参加又は出席した場合
(3) 宿日直時における病棟管理、定期的な巡視、検温等の特別な処置を要さない業務、患者急変等に備えての待機、看護師等への指示や確認又は継続性のない短時間の業務
(4) 休日の出張又は兼業等により、予め労働日又は労働時間の割り振りを行っている場合
(5) 労働時間管理者に申告せずに院外に持ち出して処理した業務。なお、事前に許可を得て従事する場合であっても個人情報保護等の法令及び院内規程等を遵守し、本院が保有する個人情報は決して持ち出さないこと。
(6) 上記のほか、労働時間の該当性が低く自己研鑽の趣旨が強いと労働時間管理者及び当該医師の双方が認める場合
(時間外労働等の確認及び手当等の支給手続)
第8条 医師は、本院が定める時間外労働等の記録簿に、労働日毎の始業・終業時間、時間外労働等時間数及びその労働内容を記録し、その都度、労働時間管理者の確認を受ける。
2 労働時間管理者は、当該医師より申告のあった内容と実際の在院時間帯を確認し、その時間数に著しい乖離がないか(他に時間外労働等や労働に該当する自己研鑽時間の申告漏れがないか)を必要に応じて当該医師や上級医等に確認する。
3 労働時間管理者は、当該組織の医師の記録簿を取りまとめ、勤怠業務担当者(上原キャンパス事務部総務課)に提出する。
4 勤怠業務担当者(上原キャンパス事務部総務課)は、提出のあった記録簿の記載内容を確認し、手当等の支給手続を行う。
(本院における自己研鑽の考え方)
第9条 自己研鑽は労働時間に該当する場合と該当しない場合があり得ることから、本院在院中における自己研鑽の取り扱いは下記のとおりとする。
(1) 所定労働時間内の自己研鑽
労働時間管理者が指定する場所(院内又は医局)で行う場合は労働時間として取り扱う。
ただし、教員ではない非常勤職員の医師が、診療業務との直接的な関連性のない大学院の受験勉強、学位取得や専門医取得のための研究等を行う場合は、事前に労働時間管理者の許可を得て行う場合に限り労働時間として取り扱う。
(2) 所定労働時間外の自己研鑽
診療業務との直接的な関連性の有無にかかわらず、労働時間管理者の明示又は黙示の指示がある場合は時間外労働等として取り扱う。
なお、労働時間管理者の明示又は黙示の指示なく診療業務と直接的な関連性のない自己研鑽を行う場合は、診療業務を監督する者から奨励されている等の事情があったとしても時間外労働等には該当しない。
2 労働時間管理者は、所属する組織の医師を所定労働時間内に自己研鑽を行わせるときは、当該自己研鑽の労働時間該当性を明確にする観点から、必要に応じて当該医師が診療体制に含まれていないことを関係者に対して周知しなければならない。
3 所定労働時間内の自己研鑽を許可された医師に対しては、原則として通常業務への従事を指示できない。ただし、突発的な必要性が生じた場合は、労働時間管理者又は診療業務を監督する者から当該診療業務への従事を指示できるものとし、この場合、当該診療業務を指示した者は、事後速やかに労働時間管理者へ報告しなければならない。
(留意事項)
第10条 給与規程第23条の規定に基づき、管理職手当の支給を受ける職員には手当等を支給しない。
2 労働時間管理者自身の時間外労働等は自ら確認するものとし、必要に応じて病院長が点検するものとする。
3 時間外労働等の記録及び手当等の支給手続に用いた書類等は、勤怠業務担当部署(上原キャンパス事務部総務課)において5年間保存しなければならない。
(雑則)
第11条 この要項に定めるもののほか、医師の時間外労働等の取り扱いに関し必要な事項は病院長が別に定める。
(改廃)
第12条 この要項の改廃は、本院病院運営委員会の議を経て病院長が行う。
附 則
1 この要項は、令和2年4月1日から施行する。
2 「琉球大学医学部附属病院における医師の診療業務等に伴う時間外労働手当支給基準(平成16年11月16日開催病院運営委員会承認)」は廃止する。
附 則(令和2年7月1日)
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この要項は、令和2年7月1日から実施し、令和2年4月1日から適用する。
別表1(第2条第1項第5号、第3条及び第4条関係)
医師の時間外労働等を管理する者
役職 | 担当者 | 職務内容 |
本院の管理者 | 病院長 | 勤務負担の軽減と労働環境の確保 |
診療業務を監督する者 | <医師が所属する組織> | 業務の監督及び指導
(時間外労働等を指示) |
・診療部科等の長 | ||
・医局長、外来医長、病棟医長 | ||
・指導医等の上級医 | ||
<診療業務に携わる関係組織> | ||
・上級医等 | ||
医師の労働時間管理者 | 診療部科等の長 | ・労働時間管理の総括 |
・毎月の勤怠業務の総括 | ||
・医師の自己研鑽の確認 |
別表2(第2条第2項関係)
医師の時間外労働等時間数の限度
\ | 1日 | 1月 | 1年 |
時間外労働等時間数の限度 | 当該年度の「労使協定書」参照。 | ||
※ 起算日は毎年4月1日、毎月1日。 |
別表3(第8条関係)
給与支給明細に表記されている手当等の区分
手当等は「当該医師の労働1時間当たりの時間給」に、下記「表記」欄の割合を加算して支給する。 |
表記 | 区分 | 区分の説明 |
25/100 | 夜間労働
(22:00~5:00) | ・所定労働時間を深夜帯(22:00~5:00)に割り振られた場合の割増賃金(変形労働時間制部署のみ。休憩時間を除く)。 |
100/100 | 時間外労働手当
(時短者、パート) | ・時短勤務者又はパートタイム医師が、時間外労働した場合の支給割合。 |
※ 常勤医師の1日当たりの所定労働時間(7時間45分)を超過するまでの支給割合。 | ||
125/100 | 時間外労働手当
(5:00~22:00他) | ・常勤医師及びフルタイム医師が、5:00~22:00の時間帯に時間外労働した場合の支給割合。 |
・時短勤務者又はパートタイム医師が、時間外労働した場合の支給割合。 | ||
※ 常勤医師の1日当たりの所定労働時間(7時間45分)を超過するまでにおいて深夜帯(22:00~5:00)に時間外労働した場合。 | ||
135/100 | 休日給
(5:00~22:00) | ・休日の5:00~22:00の時間帯に勤務した場合の支給割合。 |
150/100 | 時間外労働手当
(22:00~5:00) | ・常勤医師及びフルタイム医師が、深夜帯(22:00~5:00)に時間外労働した場合の支給割合。 |
・時短勤務者又はパートタイム医師が、時間外労働した場合の支給割合。 | ||
※ 常勤医師の1日当たりの所定労働時間(7時間45分)を超過して深夜帯(22:00~5:00)に時間外労働した場合。 | ||
160/100 | 休日給
(22:00~5:00) | ・休日の深夜帯(22:00~5:00)に勤務した場合の支給割合。 |
150/100
175/100 | 60時間/月を超過する時間外労働手当等 | ・1ヶ月(4週間単位)の時間外労働及び休日給の合計が60時間を超える場合、労働1時間当たりの給与額の150/100(その勤務が深夜において行われた場合は、更に25/100を加算した175/100)を支給。 |
別表4(第9条関係)
本院在院中における自己研鑽の考え方
(1) 医師である教員
診療業務との直接の関連性 | 監督する者の明示・黙示の指示 | 自己研鑽 | |
所定労働時間内 | 所定労働時間外 | ||
○ | ○ | 労働時間 | 時間外労働等 |
○ | ×(○) ※1 | ||
× | ○ | ||
× | × | 労働に該当しない研鑽 |
※1 診療業務の性質上、監督者の明示又は黙示の指示がない事態は考え難いことから、この場合は原則として労働時間又は時間外労働等と認める。ただし、労働日毎の当該医師による自己申告の際に、労働時間管理者及び当該医師の双方により確認しなければならない。
(2) 医師である非常勤職員(医員、専攻医、専門指導医、研修医)
診療業務との直接の関連性 | 監督する者の明示・黙示の指示 | 自己研鑽 | |
所定労働時間内 | 所定労働時間外 | ||
○ | ○ | 労働時間 | 時間外労働等 |
○ | ×(○) ※1 | ||
× | ○ | ||
× | × | 研鑽を認めない ※2 | 労働に該当しない研鑽 |
※1 診療業務の性質上、監督者の明示又は黙示の指示がない事態は考え難いことから、この場合は原則として労働時間又は時間外労働等と認める。ただし、労働日毎の当該医師による自己申告の際に、労働時間管理者及び当該医師の双方により確認しなければならない。
※2 非常勤医師は「専ら診療に従事」することが労働条件のため、所定労働時間内において、診療業務との直接的な関連性のない自己研鑽を行う場合は許可を得る必要がある。