○国立大学法人琉球大学における生成AI利用に関するガイドライン
(令和5年9月27日制定)
1 本ガイドラインの目的
近年、生成AIについては、世界中の様々な分野でその利便性に注目が集まり、議論も進行しています。 
生成AIの利用は、利便性・生産性の向上に効果が期待される一方で、利用することによる懸念やリスクも指摘されているところであり、本学の教職員および学生においては、国内外で指摘されている生成AIの注意点に留意しつつ、本学の教職員および学生が新しい時代を切り拓く技術として生成AIを積極的に活用することが望ましいと考えられます。
本学では、ChatGPT等の生成AIの利用について学生に向けた周知をしていますが、本ガイドラインは、本学の教職員および学生(附属小中学校の児童生徒を除く。以下同。)が生成AIを利用する際に注意すべき事項についてより具体的に解説するために作成したものです。
本ガイドラインをよく読んでいただき、生成AIを適切に利用してください。
2 対象とする生成AI
本ガイドラインが対象とする生成AIは、あらかじめ学習したデータ(文章、画像、音声、デザインなど)を基に新たなデータを生成する人工知能であるChatGPTやBing Chat、Bardのような対話型⽣成AI等です。
3 生成AIの利用
(1) 基本的な考え⽅
生成AIを活用するリテラシーを身につけ、生成AIの出力内容を総合的に分析し、上手に使いこなすことができれば、利便性や生産性を向上させることができます。本学の教職員および学生がAIの扱い方や活用法、問題点について、高い倫理観を持ち、自分自身で考えて行動することを求めます。
また、生成AIの使用および生成物については、利用者が責任を負うこととなり、業務利用の場合は管理監督者にも責任が及ぶことがあります。後述の「4 利用にあたっての留意点」を基本に、次項の「(2) ⽣成AI利用の適否に関する考え⽅」を参照してください。
(2) ⽣成AI利用の適否に関する考え⽅
ア 適切と想定される場面(取組)例
①教育
・学生が母国語以外の言語の会話の相⼿として活⽤するなど、より⾃然な表現への改善に活⽤する。ただし、授業における利用については教員に相談を行い、その指示に従うこと。
・学生が論点整理や情報収集などに活用し、個々人の学びを深めること。
・情報リテラシー教育の⼀環として、教員が⽣成AIの⽣成する誤りを含む回答を教材として使⽤し、その性質や限界等を学生に気付かせること。
・授業によっては、生成AIの使用を制限したほうがよい場合があることから、教員は、生成AIについて十分な知識をもった上で、生成AIの使用禁止・一部制限などの適切な指示を学生へ行うこと。
②研究
・ブレインストーミング、論点の洗い出し、プログラミング補助等の主体的な学びの補助・支援などに使うこと。
・各教員の研究活動に対する創造性や新規性を支援するために使うこと。
・⽣成AIの活⽤⽅法を学ぶ⽬的で、⾃ら作った⽂章を⽣成AIに修正させたものを「たたき台」として、⾃分なりに何度も推敲して、より良い⽂章として修正した過程・結果をワープロソフトの校閲機能として使うこと。
③業務(事務運営)
・資料や定型的な文書を作成する際、参考にするための情報収集に使うこと。
・議事録や既存資料の要約作成、翻訳の原案作成に使うこと。
・新たな業務の企画を検討する際に、新たな視点からの着想を得るために使うこと。
イ 不適切と想定される場面(取組)例
①教育
・学生個人の意見や作品が求められる課題に対して、生成AIが出力した生成物をそのまま提出すること。
・教員が専⾨性を発揮し、⼈間的な触れ合いの中で⾏うべき教育指導を実施せず、安易に⽣成AIに相談させること。
・教員が教育の場で生成AIを使用した際、あたかも全文をそのまま使って良いと思わせること。(学生が誤って使用するきっかけとなってしまうことから、生成AIの生成文の添削をし、補足を付けて説明すること)。
②研究
・⽣成AIによる⽣成物をそのまま⾃⼰の成果物として、提出すること。
・未発表の研究データを生成AIに入力すること(他の利用者への出力情報のデータとして利用され、未発表の研究データが掲示される場合があります。)。
・学術雑誌の論文掲載ポリシーを確認し、掲載の可否を検討すること(生成AIが生成した内容が含まれる論文を受け入れない方針の学術雑誌がある。)。
・個人情報や機密情報を扱う業務において、生成AIを使うこと。
③業務(事務運営)
・個人情報や機密情報を扱う業務において、生成AIを使うこと。
4 利用にあたっての留意点
利用にあたっては、関連する法律・法令や本学の倫理規定・規則等に違反することがないかを確認しておくほか、次に挙げる各事項に十分注意してください。
「3 ⽣成AIの利用」の「(2)⽣成AI利用の適否に関する考え⽅」で「適切と想定される場面(取組)例」とされている場合でも、同様に注意が必要です。
(1) 生成物の正確性の確認
大規模言語モデル(LLM)の原理は、「ある単語の後に続く最もありそうな単語」を出力することで、もっともらしい文章を作成していくものです。生成された内容には虚偽が含まれている可能性があります。生成された情報の検証や確認作業を行うことで、誤った情報の拡散や偏った意見にならないようにする。
生成AIのこのような限界を知り、生成AIの生成物の内容を盲信せず、必ず根拠や裏付けを自ら確認してください。
(2) 機密情報や個⼈情報の保護
多くの生成AIは入力されたデータを学習に利用するため、他人が生成AIを利用した際にその学習された内容をもとにした回答が出力される可能性があります。このため、個人情報等公にすべきでない情報を入力してはいけません。入力した情報を学習しない設定になっている生成AIを利用する場合でも、禁止とします。
一部の生成AIは、個人に関する虚偽の情報を生成する可能性があることが知られています。虚偽の個人情報を生成して利用・提供する行為は、個人情報保護法(19条、20条)違反や、名誉毀損・信用毀損に該当する可能性がありますので、そのような行為は行わないでください。
機密情報を生成AIに入力すると、生成AIの処理内容や規約の内容によってはその機密情報が法律上保護されなくなったり特許出願ができなくなったりしてしまうリスクがあります。
(3) 知的財産権(著作権、登録商標・意匠等)の保護
生成AIからの生成物が、既存の著作物と同一・類似している場合は、当該生成物を利用(複製や配信等)する行為が著作権侵害に該当する可能性があります。
そのため、次の留意事項を遵守してください。
・特定の作者や作家の作品のみを学習させた特化型AIは利用しない。
・プロンプトに既存著作物、作家名、作品の名称を入力しない。
・特に生成物を「利用」(配信・公開等)する場合には、生成物が既存著作物に類似しないかの確認を行う。
画像生成AIを利用して生成した画像や、文章生成AIを利用して生成したキャッチコピーなどをロゴや広報などに使う行為は、他者が権利を持っている登録商標や意匠を侵害する可能性がありますので、生成物が既存著作物に類似しないかの確認に加えて、登録商標・意匠の調査を行うようにしてください。
(4) 生成AIのサービスポリシー上の制限の確認
生成AIにおいては、法令上の制限以外にも、サービスのポリシー上独自の制限を設けていることがあります。
士業(弁護士、税理士など)のみが可能な業務(実務)を生成AIに行わせ、資格のある人が確認せずにそのサービスや業務を行うことは既存の法律等やサービスポリシーに違反する可能性があります。
(5) 利活用に当たっての基礎的な知識・能力等についての理解・習得
生成AIの利用にあたっては、生成AIは絶えず進化しているので、新たな研究や最新の開発に関する情報を常に追いかけ、自己学習とスキルの向上に努めていく必要があります。
5 その他
生成AIに関してはまだまだ発展途上であり、今後も急速な技術的な進歩が予想されます。その進展により、本ガイドラインも改訂される可能性があります。
附 則
このガイドラインは、令和5年9月27日から施行する。
(参考)
・「ChatGPT等の生成系AIの利用について」(2023年6月15日 理事(教育・学生支援)・副学長) ※国立大学法人琉球大学
・「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」(令和5年7月4日 文部科学省初等中等教育局)
・「大学・高専における生成 AI の教学面の取扱いについて」(令和5年7月13日 文部科学省高等教育局)