○山口県立大学における研究・実験に係る生命倫理に関する指針
(平成18年4月1日規程第6-37号) |
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1 趣旨
この指針は、山口県立大学において、人権及び動物福祉並びに安全に配慮した科学的な研究を実施するため、遵守すべき事項を定めるものとする。
2 適用範囲
この指針は、次に掲げる研究に適用する。
(1) 組換えDNA実験
(2) 細胞等を用いたその他のin vitro実験
(3) 人を直接に対象とする研究
3 学長の責務
(1) 本学における研究の計画または計画の変更の妥当性を確認し、その実施を許可する。
(2) 実施を許可した研究について、適正に実施されるよう必要な監督を行うとともに最終的な責任を負うものとする。
(3) 実施を許可した研究について進行状況および結果を把握し、研究が倫理的、法的または社会的に適正に実施されるよう必要な措置を講ずる。
(4) 研究が適切かつ安全に行われるために必要な基本事項を定める。
(5) 学長は、研究に関する倫理並びに研究の実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修を当該研究機関の研究者等が受けることを確保するための措置を講じなければならない。また、自らもこれらの教育・研修を受けなければならない。
4 組織
(1) 学長は、研究の適正な管理を行うため、山口県立大学生命倫理委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(2) 委員会に関して必要な事項は、別に定める。
5 研究計画の作成、審査、手続き等
(1) 研究責任者は、あらかじめ研究計画書(別記第1号様式~第3号様式)を作成し、委員会に提出して意見を聴かなければならない。
(2) 研究責任者は、研究計画を変更する場合は、研究計画変更申請書(別記第4号様式~第5号様式)を委員会に提出して意見を聴かなければならない。
(3) 委員会は、当該計画が関係法令等及び本指針に定める要件を満たしているかについて審議を行い、その結果を研究責任者に報告するものとする。
(4) 学長は、委員会の審査結果及び申請書類を添えて、研究実施許可申請書(別記第13号様式)の提出があったときは、許可の可否を決定し、研究責任者に通知するものとする。
(5) 研究責任者は、学長の許可を受けた後でなければ研究を実施することができない。
(6) 研究責任者は、対象者に対する危険又は不利益若しくは有害事象が発生した場合には、速やかに学長に報告し、必要に応じて、研究を停止、若しくは中止、又は研究計画書を変更しなければならない。
(7) 研究責任者は、研究を終了又は中止した場合は、研究終了・中止報告書(別記第6号様式~第7号様式)により、学長及び委員会に報告しなければならない。
6 再審査
審査結果通知書の交付を受けた申請者は、当該判定について異議があるときは、1回に限り、異議申立書(別記第8号様式)にその根拠となる資料を添付の上、委員会に提出し、再審査を申請することができる。
7 研究実施許可証の交付申請
研究者は、研究の成果を公表しようとする場合において研究実施許可証を必要とするときは、研究実施許可証交付申請書(別記第9号様式)を学長に提出しなければならない。
8 研究・実験に係る生命倫理の基本原則
(1) 科学的な客観性
研究者は、研究計画の策定、研究の実施及び研究成果の公表に当たっては、公正かつ適正に行うこととし、データの隠蔽、虚偽表示、又は人為的な操作を行ってはならない。
(2) 倫理的実践
研究者は、常に研究における生命倫理の実践を保証する責任があり、共同研究においては、すべての研究従事者が同等に責任を負うものとする。
(3) 利害の衝突
研究者は、研究対象者若しくはその保護者(以下「対象者」という。)、研究協力者又は支援者との間に起こり得る利害の衝突をあらかじめ吟味し、それらを回避しなければならない。
9 組換えDNA実験
本学における組換えDNA実験の計画及び実施に関しては、カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号))、研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令(平成16年文部科学・環境省令第1号)、及びその他の法令等(以下「法令等」という。)に基づき、実験の倫理的妥当性及び安全性の確保に努めるものとする。本学で実施可能な組換えDNA実験は、法律等で区分される機関承認実験のうち、拡散防止措置の区分がP1レベル、P2レベル、P1Aレベル、P2Aレベルに該当する実験に限定する。ただし、P2Aレベルに該当する実験は、キャンパス移転後の施設において実施を行うこととする。
(1) 安全主任者
ア 組換えDNA実験に当たって執るべき拡散防止措置及び実験の安全確保に関し、安全主任者1名を置く。
イ 安全主任者は、組換えDNA実験を実施する者の中から学長が指名する。
ウ 安全主任者は、組換えDNA実験室の管理運営について、総括的な責任を負う。
エ 安全主任者は、実験が適正に行われているか調査するとともに、実験責任者及び実験従事者に対して指導並びに助言を行うほか、実験の安全確保に関して必要な事項の処理に当たるものとする。
オ 安全主任者の任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。
カ 安全主任者は、その任務を行うに当たり、委員会と十分に連絡をとり、必要な事項について委員会に報告するものとする。
(2) 実験責任者
ア 実験計画ごとに、実験従事者の中から実験責任者を定めるものとする。
イ 実験責任者は、実験計画の遂行について責任を負い、実験全体の管理監督に当たるとともに実験従事者に対し必要な教育訓練及び指導を行うほか、実験の安全確保に関して必要な事項を実施するものとする。
ウ 物理的又は化学的に有害な物質を取扱う実験においては、実験責任者は、実験従事者の安全確保及び周辺への汚染防止に努めるものとする。
(3) 実験従事者
実験従事者は、実験の計画及び実施に当たっては、安全確保について十分に自覚し、必要な配慮をするとともに、あらかじめ微生物に係る標準実験法並びに実験に特有な操作方法及び関連する技術に精通し、習熟していなければならない。
(4) 遺伝子組換え生物等の譲渡に関する手続き
ア 遺伝子組換え生物等の譲渡、提供又は委託(以下「譲渡等」という。)を行おうとする実験責任者は、法令等の定められた当該遺伝子組換え生物等に関する情報を、譲受者等に対して提供しなければならない。
イ 前項の情報提供を行うに当たっては、実験責任者は当該情報について事前に安全主任者の確認を受けなければならない。
ウ 実験責任者は、譲渡等に際して提供した又は提供を受けた情報等の内容について、遺伝子組換え生物等の譲渡等の情報提供に関する調書(兼届出書)(別記様式第10号)により委員会に報告しなければならない。
(5) 遺伝子組換え生物等の保管及び運搬
ア 遺伝子組換え生物等が漏出、逃亡その他拡散しない容器に入れ、かつ当該容器の見やすい箇所に、遺伝子組換え生物等である旨を表示すること。
イ 前項の遺伝子組換え生物等を入れた容器は、所定の場所に保管するものとし、保管場所が冷蔵庫その他の保管のための設備である場合には、当該設備の見やすい箇所に、遺伝子組換え生物等を保管している旨を表示すること。
(6) 施設等の設置等
ア 組換えDNA実験を実施する部局等の長は、施設等を設置・変更又は改廃しようとするときは、所定の申請書(別記様式第11号~第12号)を学長に提出し、その承認を得なければならない。
イ 学長は、前項に規定する申請内容について委員会に調査を付託し、その助言に基づき承認の可否を決定し、部局等の長に通知するものとする。
(7) 実験施設の標識等
実験責任者は、次の表に定めるところにより、自己の行う遺伝子組換え生物等使用実験の拡散防止措置の区分に対応して、当該実験を行っている旨の標識を掲示しなければならない。
拡散防止措置の区分 | 掲示しなければならない標識 | 掲示場所 |
P2レベル | 「P2レベル実験中」と表示した標識 | 実験室入口及び遺伝子組換え生物等を保管する設備 |
P1Aレベル | 「組換え動物等飼育中」と表示した標識 | 実験室入口 |
P2Aレベル | 「組換え動物等飼育中(P2)と表示した標識 | 実験室入口 |
(8) 施設等への出入り制限
ア 実験責任者は、実験施設へ立ち入る者について、法令等に定める拡散防止措置の区分に応じて、制限又は禁止の措置を講じなければならない。
イ 実験責任者が必要と認めた者以外のものは、実験施設に立ち入ってはならない。
ウ 前項の規定により、実験施設への立ち入りを許可された者は、立ち入りに当たって、実験責任者の指示に従わなければならない。
(9) 教育訓練
学長は、実験に従事しようとする者に対し、法令等及び本指針を熟知させるとともに、遺伝子組換え生物等の取扱いの安全を図るため、一般的な教育訓練を行わなければならない。
(10) 健康管理
ア 学長は、実験従事者に対し、健康診断その他の健康を確保するための必要な措置を講じなければならない。
イ 実験従事者は、自己の健康に異常を認めた場合は、直ちに安全主任者に報告しなければならない。
ウ 安全主任者は、前項の報告を受けた場合は、直ちに必要な措置を講じるとともに、学長に報告しなければならない。
(11) 緊急事態発生の措置
ア 実験施設が遺伝子組換え生物等による汚染、若しくは遺伝子組換え生物等の拡散が発生し、または発生するおそれのある事態を発見した者は、直ちに実験責任者に通報しなければならない。
イ 実験責任者は、前項の通報を受けたときは、周辺にいる者に異常事態が発生した旨を周知させ、かつ、その災害を防止するため必要な措置を講じるとともに、直ちに安全主任者及び学長に通報しなければならない。
ウ 前項の通報を受けた学長は直ちに必要な措置を講じなければならない。
(12) 記録の保存
実験責任者は、実験の内容を記録し、及び譲渡等に際して提供した又は提供を受けた情報等を記録し5年間保存しなければならない。
10 組換えDNA実験以外のin vitro実験
培養細胞(生体から取り出した細胞を含む。)、微生物等を用いた生体外で行う実験では、実験従事者は、実験目的に適した供試材料の選定に努めるとともに、実験成績の精度及び再現性等を確保するために、供試材料の遺伝学的品質管理とそれらの安全上の取り扱いに十分配慮するものとする。また、物理的又は化学的に有害な物質を取り扱う実験に際しては、実験従事者は、人の安全確保及び周辺への汚染防止に努めるものとする。
(1) 培養細胞を用いる実験
ヒト由来の培養細胞を使用するときは、供試試料から実験従事者への病原性微生物の感染の可能性及び供試試料提供者の人権に十分配慮しなければならない。
(2) 微生物を用いる実験
病原性微生物は、原則として使用しない。また、一般に病原性がないと考えられている微生物を使用する場合にも、実験従事者及び研究室の不用意な汚染を防ぐために万全の注意を払わなければならない。
11 人を対象とする研究
人を対象とする研究とは、個人並びに集団の健康に関連する状態の研究、又はその研究を健康問題の対策に応用するものをいう。人を対象とする研究を実施するに当たっては、ヘルシンキ宣言(以後の改訂や補足事項を含む。)、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針等の倫理原則又は基準並びに個人情報の保護に関する法律及び山口県立大学における個人情報の保護に関する規程に従うものとする。
(1) インフォームド・コンセント
ア 研究者は、対象者に対し、研究の目的、研究の性質、当該対象者に求められる行為、危険、研究から予測される利益等について十分な説明を行い、対象者が理解した上で、書面による同意を得なければならない。
イ 職業に関する記録、医療に関する記録、組織サンプル等を研究に利用することについて対象者の同意が得られていない場合には、研究者は、個人を特定できる情報を開示してはならない。
ウ 地域住民等の特定の集団を対象に、当該地域住民等の固有の特質を明らかにする研究を実施する場合には、研究対象者等及び当該地域住民等を対象に、研究の内容及び意義について説明し、研究に対する理解を得るよう努めなければならない。
エ 研究者は、対象者に対して、いつでも研究への参加又はその中止ができる自由を保証しなければならない。特に、研究者が対象者に対して権威的又は影響力のある立場にあるときは注意を払う必要がある。
オ 研究者は、研究への参加を強制してはならない。研究参加を勧誘する場合には、対象者の文化や伝統に照らして、倫理的に十分配慮しなければならない。
(2) 利益を最大に、不利益を最小にすること
ア 研究者は、対象者及び地域社会に利益を還元する手段を考慮に入れて、研究結果を伝達することを考慮しなければならない。
イ 対象者に対し、当該対象者個人の健康に関する研究結果を伝達できない場合においても、対象者の属する地域社会等に研究結果の利用を図るよう努めるなど、研究対象者への利益の還元に努めなければならない。
ウ 研究者は、研究が対象者及び地域社会に不利益をもたらし、地域社会の価値に背く悪をなすおそれのあることを常に認識し、不利益を最小にするよう努めなければならない。
(3) 秘密保持
研究者は、研究の実施に携わる上で知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。研究の実施に携わらなくなった後も、同様とする。
附 則(平成26年6月1日)
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附 則(平成27年10月1日)
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附 則(令和3年4月1日)
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この指針は、令和3年4月1日から施行する。
附 則(令和3年6月30日)
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この指針は、令和3年6月30日から施行する。
附 則(令和4年4月1日)
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この指針は、令和4年4月1日から施行する。
附 則(令和5年7月1日)
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この指針は、令和5年7月1日から施行する。